「彼、何やら、全共闘とかいうのの代表になったらしいねん」と
美智代さんが淡々と言った。
ある日、安田講堂にこもる義隆さんに
彼女が着替えを届けに行くというので、同行した。
アパートで見る、学者風な相貌とはまったく異質な
いくぶん痩せや義隆さんがそこにいた。
安田講堂は騒然としていたが、
机、椅子などは機能的に配置されている。
ガリ版を切るもの、大きな身ぶりを挟んでケンケンゴウゴウの議論をする者、
チラシを読む者、ずっと前からそうしてるように、漫画本に熱中する者。
長椅子をベッドにして、布団の中から規則的にひびく寝息。
教室とは違う、闘うための生活空間があった。
私の中に内在していた反骨精神やユートピア志向が
外へ引き出されていくような気がした。
美智代さんのパートナーとして見かける彼と
安田講堂という闘争の拠点で日常を過ごす彼。
本来なら非日常である学生運動が、いつのまにか日常になっていることに、
撮るという欲求を掻き立てられたのも確か。
「東大全共闘1968-1969」 渡辺眸 新潮社
3 months ago
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