六十九年二月二十一日、日比谷公会堂では午後五時から
「全国労学市民連帯集会」が開かれていた。
七時すぎ、予定されていた報告がひと通り終わった頃
突然歯切れのよい司会者の報告。
「ただ今全共闘の山本くんが官憲の網を突破して到着しました・・・・」
逮捕状が出て潜行していたが、巧みな演出で
久しぶりに山本義隆が壇上に姿を表した。
彼はそこで、延々四十分にわたる長い演説を行った。
きちんと食事がとれているのか、運動不足のせいか、
彼がいくらか肥えて、白いつややかな顔色をしている。
控え室で椅子に座る彼の背後から
「山本、覚悟してくれ」という声がかかった。
彼は静かにうなずく。
そして私に「カミさんによろしく言ってくれ」と、ひとこと言った。
一九六十九年9月5日、潜行二百二十七日目。
日比谷野外音楽堂、有楽門にて公演前に
山本義隆は逮捕される。
「東大全共闘1968-1969」 渡辺眸 新潮社
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